今回のテーマは「採用ブランディング」についてです。
最近、学生をターゲットにした採用ブランディングの需要が増えてきています。
その大きな理由は、2021年に経済団体連合会(経団連)の新卒一括採用廃止という話があります。これにより学生の採用活動時期が早まり、今まで以上に採用広報の長期化と競争激化が見込まれています。各企業は、他社との差別化が図れる「採用ブランディング」に興味を持ち始めています。 また、その他従来型の採用戦略では「採用人数の不足」や「採用後のミスマッチ」などうまく成果が出ていないことも要因として考えられます。 特にBtoB企業や中小企業などは学生の認知度が低く、母集団形成に苦戦しています。採用ブランディングは、それらの問題も解決できるということで注目されてきてます。
では実際「採用ブランディング」がどのようなものかを、導入方法やメリットなども含めて説明していきます。
採用ブランディングは、「企業理念」や「想い」、「強み」などに共感し「ファン」になってもらい、「入社」してもらうことを目指します。
採用ブランディングの難しいところは、企業だけでは作れないことです。学生が企業に情緒的なメリットを感じファンになったとき、はじめて成立します。そのために、学生に合わせた文脈で、情緒的なメリットを何度も伝えつづける地道な活動が必要になります。 一般的なブランディングと異なり、採用ブランディングはターゲットも新卒学生、また接触できる期間も4年程度と基本的には決まっています。ターゲットも期間も限られているので通常のブランディングよりも簡単だと思われがちです。しかし、大学に入りたての1年生と就活の最終段階である4年生とでは採用に対する考え方も意識も異なっているなど、考慮すべきことは多くあります。
そのため、学生の心理変容に合わせ中長期と短期のブランディングをおこなうことが必要となります。
中長期のブランディングでは3年以上の期間を想定します。就職を意識していない低学年層の学生も含め企業との接点を用意し、適切な情報に接することがきる状態を作ることがベースになります。そして、学生のニーズに応じた情報に何度も触れる機会を与え、企業への興味喚起や理解促進などを促し、入社意識を高めていきます。
この中長期採用ブランディングに最適なのが、自社採用サイトを拡充したオウンドメディアを活用する方法です。Web媒体は時間、場所に関係なくいつでもアクセスすることができ中長期の採用ブランディングに向いています。 オウンドメディアはSEOにも対応でき、不認知層(リード)を獲得できることも魅力の一つです。また、その他のコンテンツを回遊させることで企業理解が進み、ファン化へと導くことができます。
短期間の採用ブランディングは、大学3年生などを対象に1〜2年程度の期間でおこなう従来どおりの施策になります。本格的に就職活動を始めている能動的な学生がターゲットになるため、入社後の姿を想像させるなど具現化させてエントリーへと導いていきます。動画で実際の社員や社内の様子がわかるようなコンテンツ配信をするのはもちろん、オンラインでOGOB訪問ができるような機能をもたせブランド体験を強化させることも効果的です。
学生の心理変容を促すには時間がかかります。「ファン」になってもらうのはさらに大変です。地道な中長期的施策とクロージングさせる短期的施策を並行活用し採用ブランディングを成功させましょう。
では、採用ブランディングの設計方法やメリットなどを説明していきます。
採用ブランディングは、中長期、短期に関わらず調査・分析からはじめます。3C分析は比較的簡単にに実施することができるのでオススメです。❶学生、❷競合他社、❸自社の3つを分析し、それをもとにターゲット学生を明確化し、他社との差別化ポイントを抽出し、自社の魅了や強みを見つけ出していきます。 ※3C分析の手法については今回は割愛しております。
3C分析後、ブランディング施策をするために設計をおこないます。今回は簡単な流れだけ説明します。
まずは、どんな学生に入社してほしいかを明確化にする事が重要です。これは採用ブランディングに限らず従来型の採用戦略でも同様です。 採用ブランディングだからといって、「経営理念」に共感してくれる学生、などと曖昧な設定にしてはいけません。曖昧すぎるとコンセプトやコミュニケーション設計などに大きな影響がでてしまいますので、ターゲットはできる限り絞り込むことが重要です。 「想い」などの情緒的つながりは重視すべきですが、業種や職種に応じた最低限のスキルも必要になります。そこで、高いパフォーマンスを発揮している社員を元にキーワードを抽出していきます。
例えば、システムエンジニア(SE)の場合 「想いへの共感」「ooというプログラム言語に精通」「論理的思考」「コミュニケーション能力」といった感じでキーワードを抽出。次に、各キーワードに優先順位をつけ、欲しい人材像を明確にしてます。そしてこれらの情報を元にペルソナを作成していきます。
上記のキーワードの順位は選考途中段階での採用基準として活用でき、担当者間での評価のブレを抑止することがにもつながります。
採用コンセプトは3Cの自社分析で抽出された「強み」や「魅力」、また「企業理念」などをベースに考えます。ここで、注意すべきなのは母集団形成を重視するあまり学生に迎合し、本来の意図と異なるコンセプトにしないことです。
コンセプトはできるだけ端的で伝わりやすい文章にまとめます。 コンセプトは文章化されているため読まないと理解してもらえないというデメリットがあるので、より学生に伝わりやすいようにキャッチコピーを作成します。 キャッチコピーは、英語や日本語でも、また単語や短文でも問題はありません。ただし他社との違いを明確しなければなりませんので、ありきたりで耳障りのいい言葉などは避けます。
コンセプトやキャッチコピーは採用ブランディングのコアとなる部分なので、できるだけ専門のコピーライターなどに依頼するようにします。
採用各フェーズにおける学生とのコミュニケーションは、オンラインを主軸にオフラインとの連携をとっていくよう設計していきます。 オンラインでは、マイナビなどの採用媒体での初回接触や認知拡大、そして自社新卒採用サイトで興味喚起、理解促進などの「深い」コミュニケーションという切り分けをします。 オンラインは直接体験ができないというブランディングにおいての大きなデメリットがあります。そのデメリットを学内説明会や就活イベントなどのオフラインイベントで補完していく形でコミュニケーションを設計します。
学生とのコミュニケーションは、中長期と短期を考慮し設計を行います。従来型の採用活動では1〜2年程度の短期施策が多いかと思いますが、採用ブランディングでは中長期施策で大学低学年層へのリーチも考えていかなければなりません。そのため、短期施策と同時に中長期施策を実行し続けることが必要になります。 オンライン・オフラインと中長期・短期の両方をかけ合わせたコミュニケーション設計をし、学生の心理変容をタイミングよく促すようにします。
採用ブランディングを成功させるには、5つのポイントがあります。基本となる部分だけですが、簡単に説明します。
企業目線ではなく文脈をターゲット学生に合わせることが重要です。学生が業界のことをあまりよく理解していないのであれば、専門用語などは使わずに伝えるなど工夫をします。また、プッシュ型の広告のようなウリ文句を並べるのではなく、なぜ自分たちが存在しているのかなど期待感を醸成していくことも重要です。
各種コミュニケーションの接点では一貫したメッセージ(コンセプトやビジュアルも含め)を伝えることが重要です。場所や人が変わったても、簡単にブレないようコントロールをします。そうすることで、学生へのイメージ強化が行われ想起率を高めることができ、エントリーの際に選ばれる企業になります。
「想い」や「やりがい」など情緒的なものは、形がなく学生にとってはイメージしづらいものです。そこで、社員の声などにして感情を伝わりやすくことが重要になってきます。また、業種や業務内容の紹介でも、現場の「生」の声などを取り入れ疑似体験をさせることで理解を深めさせることができます。
採用ブランディングではWebを活用することをオススメします。特に中長期の対象となる就活前の学生はイベントなどに参加できないことも多いので、誰でも閲覧できるWebを接点にするのが最適です。また、その際SEOに強いオウンドメディアを導入すれば、広範囲の学生にリーチすることも可能になります。
信憑性の担保、安心感の醸成をするためには、第三者メディアなど他社目線での中立な意見が効果を発揮します。自社メディアだけでは足りない部分は、マイナビなどの採用媒体を積極的に活用することをおすすめします。
上記以外にも採用ブランディングの成功に必要なことは多くありますのが、この5つのポイントは最低限押さえるようにします。
採用ブランディングは時間がかかる大変な施策です。でも、その分リターンは大きくなります。 企業の大小や待遇などではなく、情緒的メリットに魅力を感じた学生が入社することは会社にとって大きな力となります。 入社前から理念など「想い」の共有ができていることはもちろん、やりたいことなど「考え」が一致している新入社員はモチベーションも高く、最大限のパフォーマンスを発揮してくれることでしょう。
採用ブランディングのメリットは大きく下記の5つになります。
ブランディングが成功するとその効果は長期間持続します。今後採用活動の長期化が見込まれる中、最適な施策になります。従来のような数年に一度コンセプトを見直すという慣習を見直し、もっと長期視点で取り組むことも考えていかなければなりません。
ブランディングにより情緒的なつながりもできており、企業理解も促進できているので入社後のミスマッチが起こりにくく、新卒学生の早期退社数も減少します。
企業独自の魅力や強みだけではなく、情緒的なつながりは他社との圧倒的な「差」になります。企業の大小や待遇に関わらず、選ばれる可能性が格段に高まります。
不人気な業種や企業であったとしても、企業理念や想いといった異なるアプローチから接触することで、今までと違う新たな学生層とのつながりを持つことが可能になります。
会社の強みや想いを採用サイトなどで明示化することにより、社員に帰属意識を強化することもできます。また、各採用ツールに社員を掲載することで、モチベーションの向上も期待できます。
このように多くのメリットをもたらす採用ブランディングは、すでに認知がある大手企業などよりも、認知度の低い中小企業の方が恩恵は大きいかもしれません。 BtoBの企業や中小企業などは、知名度が低く学生の興味を引くことは簡単なことではありません。そこで、採用ブランディングを実施し、大手企業とは異なるアプローチで学生とつながりをもつことができれば、不認知企業や不人気職種にもチャンスは出てきます。
「採用ブランディングは簡単に低コストで短期間でできる!」という考え方もありますが、残念ながらブランドは簡単に構築することはできません。しかし、採用ブランディングは難しい分、成功した場合のリターンは大きく魅力ある施策になります。
私たちは数多くの採用サイト構築や採用ブランディングをおこなってきました。もしも、採用ブランディングの構築でお困り事や相談事があればお気軽にお問い合わせください。まず、現状のヒアリングを行わせていただき、どのようなブランド価値があり、どのようにターゲット学生に伝える文脈がいいかなど、一緒に考えていければと思っています。